筑駒、開成から旧帝大、国立大学の医学部への合格が多くはない理由。勉強法、予備校

大学受験のことについて何らかの記事をかいたり意見を言ったりする人は近年では多いです。そしてそういう人たちの中には、国公立大学の医学部への合格を高校などのレベルの指標としてかなり重視する人たちもいます。
こういう人たちは、灘、筑駒、開成をはじめとする上位進学校に関して、国立大学の(医)への合格者の割合が高くないと東大や京大への実績があっても高校としてたいしたことがないというように言いたがります。
医学部に受かる人以外は、勉強法に関してもたいしたことはやっていなかったのだ、というように言いたがる人たちもいます。
関西や北陸の数校のほうが、国立大学の(医)の分、筑駒、開成よりもトータルですごい。だからそれを認識できないのは(医)のすごさを分かっていない受験素人。そういわんばかりの人たちもいます。
国立大学の(医)と東大、京大を同格にして数値化する人もいます。
しかし、医学部、医者というものについて学校、地域ごとに価値観が違えば進学行動も違ってきます。
当然どう勉強するのか、何を重視するか、どんな勉強法でいくのかもちがってきます。
まず筑駒に関しては、学校の所在地などのこともあって、親御さんが伝統的に、国家公務員のことも多いです。当然、職業に関する価値観が影響を受けます。
志望学部がどうしても影響を受けます。とうぜん英語、数学、理科、社会のうち勉強法の面でもどれを重視するか、も違ってきます。
また筑駒の生徒さんたちの場合、数学に興味を持つことが多いので医学部というより、理学部、工学部の方向の志望になります。物理学科、を意識する人が多いです。行く予備校や塾からして、数学、理科、英語の中だと数学についてレベルの高いところに通うという傾向もあります。勉強法についても、英語にこだわるというより、数学にこだわったりします。これらの結果、合格者に関しても、理学系、工学系と法学部が多めになります。次に開成については、医師の子供は多くはありません。親御さんの職業は、会社員、会社経営者、弁護士あたりがわりと多くなっています。したがって学部としては経済学部、法学部志望になるのも自然なことです。
勉強法が関係してくることでいうと、この2校からは全科目を教える予備校にいく人は多くはありません。(数学、理数系の専門塾、英語の専門塾に行く人が多いです。)

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関西および北陸、中京エリアに比べて、筑駒などから医学部に行く人の率が高くはない理由には、もっと大きいものもあります。
東京の人が、医院を経営しようとすると大変なのです。
たとえば、筑駒、開成などから、医学部に行き、医師になり勤務医をやりその後がんばってクリニックや診療所を開業しても、現実的には昔からある大きな総合病院に患者を持っていかれる。
ですから高校生のときに勉強法に気をつけて受かって、医師になって、勤務医になって、その後いざ開業となったときが大変なのです。
そもそも、クリニックや診療所を開設すること自体がたいへんです。東京都内の場合は、病院の建物に関する費用がかなりかかります。病院を建設するときはもちろん、ビルを借りてクリニックをはじめる場合でも賃料、保証金などが総額ではかなりの額になります。賃料や保証金などが安めのところは、マイナーな地域か中心都市だったとしてもそれの「はずれ」の方です。
そういう(安い)ところに開業しても、外れの地域なので「集客」力がありません。
したがって筑駒、開成から予備校、塾にも通い、医学部へ進学、勤務医、開業と思った場合は、少なくともそこそこのターミナル駅のエリアで駅から近いビルの一室を借りる、こうしないとどうにもなりません。そうすると賃料は高くなります。
このように筑駒や開成にいた人たちが医学部に進学し医師になり、新規に病院を作り維持していく、東京ではこれが大変なのです。
よい勉強法にのっとって学習し、合格者になり、進学し、勤務医になり、「開業」。この開業の段階がかなりたいへんなのです。
ですから、そこまで考えないで医学部に行くことを決めるというのはリスキーでもあるのです。
しかし東京以外の場合、土地の値段は東京都内ほどではありません。賃料も東京「以外」ではそこまで高くはありません。
また東京以外はそこまで、どこにいってもきびしい学閥、ランク意識があるわけではありません。(逆に、東京では予備校や塾に関してでさえ「ランク」意識があります。)
しかし、日本国内で評価の高い医学部というのは、東大・医、慶応・医、東京医科歯科大・医、慈恵医科大、日本医科大、などで、相当の数が東京に集中しているので、医師の間でのランク差がはっきりする機会も多いわけです。
どの先生はどこの大学出身なのかを知ることが多く、比較対象も多い。
実際問題としては東京では、筑駒や開成などの中学に入るまえの小学生のときに通う塾にさえランク意識があります。特定の塾にいたほうがグループとして上で勉強法もすぐれたものに接することができる、というような意識もあります。
一方、東京以外では、医学部の学校差に直面する機会は多くはありません。どこの大学であっても「お医者さん」と扱ってもらえます。
このように、東京では医師としてのランク、学校差が意識されやすい、また開業も費用の点でたいへん。しかし東京以外にはこれらのことはそれほどきびしくは出てこない。
ですから、筑駒、開成などの所在地である東京においては、医学部へ進学するというのはそんなにかんたんに考えられるものではないのです。
そしてそもそも筑駒の生徒さんの親御さんはいわば伝統的に国家公務員が多い、そして生徒さん自身は数学、物理に興味を持つことも多い。志望としては物理学科、となっている人がわりと多い。筑駒の生徒さんたちは、数学、を勉強しています。
このような状況から、医学部というより理学部の志望になる面があります。わりと早い学年のときにいく塾は数学の塾ということも多いです。
勉強法としてもレベルの高い数学を重視となっています。
また開成では親御さんの職業は、会社員、弁護士、会社経営者、公務員、(教員)あたりがわりと多い。となればその子である開成の生徒さんたちは、法学部、経済学部志望になるのも自然です。
こう考えてくると、旧帝大や国立大学の医学部への合格者が多くない高校は進学校としてたいしたことない、という主張をする人たちというのは何を見て言っているのか、という印象にもなってきます。筑駒、開成は、旧帝大や国立大学の医学部への進学の比率が高くないから、たいしたことがない。こういう意見の人は、基本的に関西、中京、北陸あたりと比較しています。
そういうエリアの場合、まず、有力校が少ない。
(塾や予備校の絶対数も東京ほどありませんから、勉強法のバリエーションも限られます。なので東大、京大、東京医科歯科大といった特徴のある大学への合格者は少ない。そういう関西、北陸、中京から受かっているのは「国公立」大学、医学部。)
開成、筑駒からは、東大の理3や東京医科歯科大、慶応などの医学部に受かっています。一方、関西、中京、北陸などから合格しているのは「国公立大」の(医)です。この2つでは、受かるために必要な勉強法も違います。
関西、北陸などでは、国立のXX大学付属高校などがあり、その人数比、経路としての比重が高い。
東京都の場合は人数からするとこれに相当するのは東京学芸大学付属くらいしかない。筑駒は一学年、200人いません。
そして、開成、桜陰、麻布、武蔵、豊島岡、駒東、海城、巣鴨、渋谷学園渋谷、暁星、女子学院など、「私立の」上位校がかなりある。さらには、日比谷、国立、西、戸山、などの都立高校もある。
まず中学、高校のルートがたくさんあり、それぞれの勉強法で、いろいろな中高に合格し進学していきます。
つまり、このようにすぐ頭に浮かぶだけでも、東京では、出来る子が15校に「分散する」わけです。
関西、中京、北陸のように、数校に集中するということは起きないわけです。
そもそも東京の場合は、学力最上位層自体がこのように分散します。当然、医学部への合格者も分散します。
分散するので(医)への名門校というのも成立する可能性がかなり下がります。
関西、中京、北陸あたりの場合は国立大学の付属と数校の私立に集中するわけです。しかし、東京の場合は、筑駒、開成を「はじめとして」15校以上に「分散」するわけです。
当然、医学部への合格者も「分散」しますので、一校における医学部の人数も多くはなりません。
旧帝大、国立大学の医学部への合格率が高くない学校は進学校としてたいしたことがない、とこだわる方は、こういった点をまったくわかっていません。筑駒、開成などのトップレベルの数校とそれ以外ではいく予備校、塾がちょっと違います。
そうすると勉強に関して、やっていることも違ってきます。普段力を入れてやっていること、重視していること、やっている内容、レベル。つまりは勉強法が違ってきます。(しかも高校2年以下のときに「やっていること」が違っています。)
さらに受験先、合格する学校ということになると、はっきり違います。
筑駒、開成などのトップ校の生徒さんたちの場合は、医学部であろうが、文系であろうが「受けない大学」というのがあります。
一方、純然たるトップ校「以外の」生徒さんたちだと、受ける大学、進学する大学あります。
同じ塾、予備校に通っていた場合でも在籍クラスがちがったり、こなし方の度合い、勉強法がかなりちがっていたりもします。
トップ校の生徒の場合、そういう所に通っていて、上のクラスに認定されるくらいやるのが半ば当たり前。しかしトップ校の生徒以外だと、クラスが変動しついていくのがちょっとたいへん。
こういう感じになっていたりします。
勉強法も、非トップ校の生徒さんの場合、実態としては公立のトップ校の人達と近いものになっています。
筑駒や開成のトップ校の生徒さんの、とくにその上層の場合、自分のやりたいことをやっているという感じになっている場合もあります。
とくに筑駒の生徒さんの場合、いくにしても単科塾、科目専門塾を好む傾向があります。
どういう予備校、塾が良いのかについては、また別の機会にでも。
筆者、略歴;一橋大学・卒、プロ家庭教師。講師歴サピックス駿台予備校、医学部専門予備校、など。(A)医学部への勉強法(B)英語の「初学者(中1)」が、これをスムーズに書けるか、も大事では?